「生きづらさ」から認知症に関係するプラスティシティの話

grayscale photo of a car on the countryside

かつて私は場面緘黙症であり家以外の殆どの場所で声を出すことがないほど緊張度の高い暮らしをしていたのですが、場面緘黙症に限らず、話すことが苦手な理由に、相手が話している情報を記憶しておくことができないことが原因で、それに対しての応答ができない。ということがあったり、発言を求められると、「頭が真っ白」になったりすることもあります。もしくは、話しを聞いていても、相手のボタンが気になってしまったり、髪の毛が跳ねている感じが気になったり、靴紐がほどけていることが気になり過ぎてしまって話が入ってこないというタイプの人もいます。

これらは全て記憶の整理整頓機能に関係があります。ここをホリスティックに見ていきます。

crop girl playing blocks on carpet
Photo by Monstera

記憶の整理整頓はものごとを忘れたり、逆に長期的に記憶させたりすることで、そこには「脳のプラスティシティ」というものがあります。プラスティックのように簡単に形を変えることができるイメージです。これについてまた後でさらに説明しますが、「新しい状態に対して変化できる能力」のことを指します。

脳は本来、新しい状態に対する変化がとても得意です。

脳の細胞のことをニューロンと言いますが、ニューロンは要求に応じくっ付いたり離れたりを繰り返します。ニューロンとニューロンの接合部分をシナプスと言います。

生まれた時、ニューロンは2500本のシナプスで他の細胞接続されています。3歳頃に、このシナプスは最高数に達し、実に15000本程になります。生まれた時の6倍になっているということなのです。「三つ子の魂百まで」というには意味があって、最初の3年間の記憶はその後の人生に大きな影響を及ぼします。

ホリスティックな見方をすれば、3歳頃には自我が出てきます。「わたし」「僕」を理解します。3歳までに暮らしのリズムができ、安心感を感じながら育った子どもはその後の人生においても自信の備わった子に育っていく可能性が高いのです。(子どもが描いた絵を見ると分かります。) 

3歳を過ぎるとシナプスは減少し始めます。3歳までに生存に必要な情報を全て記憶するのです。生まれた直後から快適な刺激を与えることでシナプスが増えていきます。親の顔、親の態度、親の雰囲気、木、花、水、動物の名前、食べるということ、飲むということ、歩くということ、走るということ、痛いということ・・・様々な生存に関する記憶を3歳までに持ちます。快適な刺激を経験した赤ちゃんは、脳が発達し「原始反射」が統合されることで、反射ではなく脳を使って記憶をもとに行動し始めることができるようになってきます。

大人になると、シナプスは半分に減ります。必要ではないシナプスを選んで剪定します。そうして学校などで新しいことを学び、自分にとって難しいと思うようなことにチャレンジし、情報を得て、習得し、ニューロンが成長していきます。

「新しいチャレンジ」はまだ記憶の中にある情報ではありません。し慣れたことは新しいニューロンの結合を作らずに既に存在している接続だけを強めていきます。新しいことを習ったり、新しいことにチャレンジし、それを応用していくことで長い期間ニューロンの接続を作るという構造があります。

学校で習うことを応用して、使っていくことで一生使える長期記憶になります。なので、私が働いていたようなシュタイナー学校では同じ話を何度も違う形でしていきます。例えば北欧神話の話から様々なことを学ぶ4年生にまずは、ストーリーを聞かせる。そしてそのストーリーにまつわる絵をクレヨンや色鉛筆で描く。そして絵の具で描く。バイキングの盾や鉾を木工で作る。北欧神話のシーンを描くタペストリーを針と毛糸を使って刺繍する。北欧の歌を歌う。北欧の食べ物を作って食べる。五感を使い、応用することで長期記憶になります。ニューロンが情報を保持している期間が長いのです。つまり、忘れないのです。

circular wooden viking shield on timber shelf
Photo by Erik Mclean

記憶には三種類あります。数時間しかもたない短期記憶、数時間以上持続する長期記憶、何日も何年も持続する遠隔記憶です。短期記憶と長期記憶は主に海馬が司り、遠隔記憶は大脳皮質で記憶されています。また、大脳皮質の一部である前頭連合野にはワーキングメモリーがあり、ここで記憶の一時的な整理が行なわれています。脳内の黒板のような役割を果たします。そこで働いているのがプラスシティティです。

プラスティシティは、よく使われる記憶を蓄え、使われない記憶を消去して情報を整理整頓する働きがあります。つまり、その人にとって重要なことを記憶し、重要でないものは忘れるということです。黒板がワーキングメモリーだとすると、チョークと黒板消しがプラスシティティですかね。

chalkboard with written equation for math lesson
Photo by Monstera

忘れるというとネガティブなイメージになりますが、これが「こだわり」としてその人に生きづらさを感じさせる原因になることがあるので、忘れることもとても大事なのです。

人間の長期記憶の容量は実は無限だと言われています。サバン症候群の人は何千年前の特定の日にちの曜日をすぐに言えたり、オーケストラの演奏を聴いてそれを楽器ごとに譜面に起こしたりできる能力を持っている人もいます。普通では考えられないような能力だと思いますが、それが人間の記憶容量の無限性を表しています。自閉症の子はシナプスの剪定が少なく、多くのシナプスをもち続けるのではないかといわれています。脳の構造を調べた研究では、2歳の時点で、自閉症児の脳の容量が大きいというデータもあります。特に前頭葉や側頭葉で顕著だそうです。つまりプラスティシティが上手く働いていないということ。

自閉症の人のこだわりの強さはここにあるのです。情報の剪定が上手くできず、忘れてもいい情報と覚えておいた方がいい情報の仕分けができないのです。正常に脳が働いていれば、重要ではない情報の選別が行われ、「相手のボタンの形」などに囚われず、大事な話を聞くことができます。

自閉症だと言われていなくても、脳のプラスティシティが上手く機能していなければ、相手の声のトーンや目の動きなど様々な情報を受け取り、大事な話を記憶しておくことが逆にできなくなります。忘れやすいというのは、別のことを大事だと脳が判断してしまい、こちら側の大事であることとのズレがあるから「忘れやすい」とか「混乱している」と見えるのです。

黒板にごちゃごちゃに文字がギッチリ書かれているようなイメージです。

また、感覚が過敏な人というのは、生存モードでもあるので、自分自身の内受容感覚(心拍や血圧や体温など)に圧倒的に支配されてしまい、外の情報を受け取れなくなるといような別の要因(脳レベルでは同じかも。そちらの情報の方が大事だってことですよね。
)があります。

とはいえ、このプラスティシティを活性化することで、これらの症状は改善されることが多いのです。

vintage camera on wooden floor near blanket and lunaria
Photo by Hatice Noğman

長期記憶はその人にとって大事な情報を応用することでできあがることを書きました。つまり、新しい挑戦や新しい学びがあり、それに対してトライ&エラーを繰り返すことで症状が改善されることがよくあるのです。実は「エラー」がとても大事で、それはつまり失敗するということでもあるのですが、そこでその失敗に対して、「どうやって?」と考えることがプラスティシティであり、脳を成長させるのです。新しい状況に対応する力です。

忘れやすさに関しては、大事だと判断するポイントが違うということでもありますが、それは別に「お前の価値観を変えなさい」といってそうなるわけでもないのです。脳の機能的な判断の問題です。

記憶力というのは長期記憶になるわけですが、勉強ができる家系の人は皆勉強ができたりすることもありますよね。医者の家系は全員医者とか・・・それはどういうことかといえば、五感を通して入ってくる情報の処理の仕方が遺伝するからです。ですが、その遺伝の割合は実は大したことはありません。極々小さな割合です。それよりも、エピジェネティックスといって、そのあとの環境から学んだことが遺伝子構造を変えるほど影響力が強いということでもあるのです。何せ、脳は変化するもの。「プラスティシティ」という名がつくように、プラスチックのように変わるものですから。

記憶力や学習力は若いときの方がもちろんプラスティシティのレベルが高いので、=頭が柔軟 なので、効果的ではありますが、年齢に限定される必要はありません。

プラスシティティを高めるにはどうすればいいか?と言えば、

anonymous barefooted melancholic woman embracing knees on floor
Photo by kira schwarz

状況に応じて新しい判断、新しい動きをするということ。

つまり、同じことばかりを繰り返すと既に存在しているニューロンの接続だけを使います。ということを先ほど書きましたよね。新しいことを習い、応用していくと良いのです。身体を動かすことなど行動の刺激が有効です。それが状況判断やその状況に応じた動きを生み、使われていなかった脳の機能が活性化されるからです。

ひとつのことを繰り返し、何度もやることで、いつしか乗り越える時にドーパミンが分泌されシナプスが強化されるということも言えます。自分でやってできたことによって分泌されるドーパミンがポイントなのです。これがその人の自信となります。脳は自分が学習したり運動してできたことによって自然に快感を覚え満足します。ですが、他人に施してもらったことや薬などで得ようとする快感は満たされず苦しむことになります。いつまでも満たされない状態が中毒なのです。

場面緘黙の人やHSPと呼ばれる人にとって、いきなり社会的な場で様々なチャンレジをしていくことは難しかったり、自閉症の人も含めて原始反射があったりして、できないこともあるのは確かです。ですが、脳は年齢関係なく進化します。また自分を成長させ続けるということが霊的に大事なのです。

もちろん、精神世界のそのような話を信じたくない人もいるとは思うのですが、それでも、自分自身の繊細さという名のもとに、自分の成長を止めて見たり、「変わらなくていい」ということにしてみたり、コンフォートゾーンに居座るという選択=楽しいことだけ選択するということをしていると、

プラスティシティのレベルが下がってくるので、認知症になる確率がかなり高まります。「そのままのあなたで」という言葉に警鈴を鳴らしたいと思います。

今の自分の状態を認めることはとても大事です。それを認知することはとても大事です。そして極端に無理をしてコンフォートゾーンから出る必要はありません。場面緘黙症の人にいきなり舞台に立たせて喋らせるなんてことはしてはいけませんが、その人、その人のコンフォートゾーンを越えていくことはとても大事。

だからこそ、私が勧めるのは、ホリスティックアートセラピー。様々な色や形、そして簡単な身体の動きや、目の動きを整えていくことが、正にこのプラスティシティを高めるのです。

どうか、「そのままのあなたでいい」に収まらないでください。

そして、逆に「その恐れのブロックを私が外してあげます」というような他人の施す信憑性のないヒーリングのようなものにも気を付けてください。自分で行動し、自分で乗り越えていくことがとても大事です。

恐れには5つの積み木を繋げるコヒーレンスが必要になるので、その話はまた別の時に。

ドネーションをお願いしています。いつか必要な人に全てのセッションを無料で提供していくことを目指しています。

投稿者: mayumicosmiclight

神奈川県生まれ神奈川県育ち。20代でオーストラリアに移住。 感覚処理障害から精神的な不安定さに悩まされて大人になる。 感覚が全て繋がった状態であるシナスタジア(共感覚)を持つ学習障害者。 シドニー大学博士課程前期終了。Art専攻。 シュタイナー教育を学び、シュタイナー学校で手仕事やアートを教える。 自閉症スペクトラムや感覚過敏の子どもたちと関わる中で様々なことを学び実践。 現在はCosmic Light Therapy® Cosmic Light Pty Ltdディレクター。 感覚過敏や学習障害、スペクトラムなどを持つ子どもや大人のCurative Education, エクストラレッスン®、鉱物療法、ホリスティックアートセラピー、サウンドセラピー、身体を使った発達のサポートなどを合わせたホリスティックセラピーを用いて生きづらさや感覚過敏の人たちが、12感覚をバランスよく使い360度の空間を使うことで生きやすさを得るための知識を伝える講座や、身体と感覚、占星術を合わせて用いた講座などを行っている。地球にも身体にも優しいエシカル商品の販売を日本で販売。また、それぞれの人が乗り越えてきた人生経験を活かして社会貢献ができる人材育成を目指しLRCスクールで起業サポート講師をしている。

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