日々、様々な方のコンサルテーションやセラピー、講座などを通してお話する中で、いかに生きづらさを抱えている方が多いのか、ということに驚かされます。
もしくは「生きづらさ」がデフォルトになってしまい、もはや、諦めていることにも気付かず、可能性を発揮できないまま、ただ何か満たされない思いだけが残り歳を重ねていく方もいらっしゃいます。
生きづらさについて、様々な角度から見ていますが、今日は「視空間認知」について書いてみたいと思います。

前回書いた「協調性運動障害」の中のひとつの原因として視覚認知や視空間認知の困難さが考えられます。例えば、
□字が上手く書けない
□升目の中に漢字を書けない
□片づけが苦手
□ひっ算をしていると、ズレてきて、桁を間違える
□足の小指をしょっちゅう引っかける
□何度も同じ文字を書いているとおかしい感じがしてきて書けなくなる
□何か作業をするとき、見せてくれている人と同じ方向を向かないと分からなくなる
□図形が描けない
□楽譜を見ながら楽器を演奏できない
□地図が読めない
□同時に二つのことができない
などです。
以前書いたように、視覚には3つの主な働きがあります。
ここに書いたように、目がどう機能するのか、というのは「視力」の問題だけではありません。他の感覚と同じで、入力、情報処理、出力 というプロセスを視覚も踏みます。
この3つは関連し合っていて、この3つのうち、一つでも欠けてしまう時、「見えにくさ」が生じ日常生活に支障があらわれます。このように「入力」された視覚情報は脳へ伝わり、「情報処理」のステップになります。目から入った情報を脳で把握する力を視空間認知と言います。ひとつの線だけを見ていると、それが漢字の数字の「三」とは分かりませんが、これらの線が合わさって「三」と認知できるように、全体像を把握することができるのは視空間認知の働きです。

さらに、この視空間認知には、4つの働きがあります。
見たい対象と背景を区別する
見たい対象となる情報を見るためには、背景とその対象を区別して、必要な情報だけを選び取ることが必要になります。ひとつに絞ることと、それ以外のものを排除するようにして背景にすることで区別ができるのです。対象と背景の区別ができないと、情報過多で混乱します。
空間的な位置を把握する
自分と物の距離を把握し、高さや奥行きなどの感覚を把握する力です。上下、左右などの判別をはじめとして、物を持ち上げたりすることにも必要な力です。
形や色を分別する
色や形ごとに正しく分けたり、絵を描いたりするときに使う力で、目から入った情報を分析して、形や色だけではなく、輪郭なども認識しています。
「同類」のものを認識する
背景や場所が変わったり、大きさなどが変わっても、「同じもの」であることを認識する働きです。例えば、お母さんが翌日違う服を着ていても、お母さんだと分かるのはこのはたらきがあるからです。
これらの情報処理の段階を経て、最終的に「出力」, つまり行動になります。ですが、視覚からの情報処理が上手くできていなければ、行動と上手く結びつきません。それが前回の協調性運動障害の話です。
人間にとって出力の部分が「行動」なわけですが、行動が上手くできないということは、人生全般、大きな影響を与えます。
自分が今現在いる位置、自分が目指すところ、自分が今取るべき行動、自分に今必要な情報などを踏まえて、はじめて行動に移せるわけです。これらが分からなければ、自分の行動はある意味ズレているので、例え行動しても、思うように結果が出せないということにもなります。
もしくは見えるものが不安定だからこそ、恐れが強くなり、行動にすら移せない、不安が多すぎて行動に移せない。ということが起こるのです。

繊細な人たちに、この視空間認知の課題が見えます。
✔見たい対象と背景を区別することができず、自分に必要なものを選べないため、全てが重要な感じがしてしまい、混乱してしまいます。
✔空間的な位置を把握できないので、自分の居場所がないような不安な感覚に結び付きます。
✔輪郭や色を見る力は、自分の着地点を失わないために必要なものの見方ですし、
✔同類のものを見る力は、例えば、学校の友達にスーパーで出くわすと黙ってしまうというような子に当てはまるかもしれません。同じ子だと分からないわけではないのですが、違うところで会うだけで変な気がしてしまって喋れなくなるというのは場面緘黙症の子によくあることです。
お遊び感覚で、空間認知テストをしてみてください
https://jp.vonvon.me/quiz/2852
ものごとをバランスよく見る力とも関係がありますし、計画性、行動に結び付ける力、感情の安定性などにも深く関係があります。「人としての自立」にも関係があります。
視空間認知はアルツハイマーや認知症になると低下してきます。逆を言えば、視空間認知を発達させることは、そうなるリスクを抑えることにも繋がるかもしれません。
視空間認知というのは平たく言えば
「目に見えている部分」と「見えない部分」を区別しながら理解する能力ですから、身体を立体で使うことが必要ということなるのです。身体が体験するからこそ、空間を認知できるようになります。さらに、これは言語能力にも結び付くので、自分の人生の質を上げていきたいのであれば、立体で動く。ということが必要不可欠です。スクリーンを使っている時間が多いということは、平面しか使っていないということになるので、空間認知を高めることはできません。都会暮らしの人は要注意です。階段やエスカレーターだけの上下運動は、動きの幅に多様性がありません。人間のこのアーキタイプの身体は「動く」ため「働く」ためにあるのですね。 働くというのは、労働するという意味ではなく、
「私は世界とどう関わるか」ということになります。
つまり、私はこの世界をどんな目で見てどう関わっていくのか。ということですね。
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