健全で安定した人間であるために、「自分の位置が把握できる」ということは必要不可欠です。それが空間認知能力です。
空間認知能力というのは、とても複雑な認知機能で、生まれてから進化し続けます。
一生を通して年齢に相応しいスキルを空間能力を通して発揮していくことが、脳の発達が正常であるという目安にもなります。
赤ちゃん時代に冒険をし始め、周りの環境と関わることで、動くことと、その動きそのものの範囲を広げ、動きが自立します。それが空間をどう受け取るかという情報になり知識となります。

空間認知というのは日常の様々な要素に結びついています。特に知っている環境から知らない環境へ移行するときに自分の役割や居場所を見つけることにも関係があり、人間関係を円滑にしていくことや問題解決には欠かせないものです。地理的な場所と言うことに関わらず、「環境」の全てに空間認知は関わっています。
空間認知能力は自分の身体との関わり、
他人との関わりや自然との調和、
社会での役割を果たすことという意味での「成功」と結びつくことが分かっています。
身体を動かす量のレベルによって、脳の発達の違いが生まれます。身体を動かすことは、空間認知能力を高めます。脳内の血液の流れが促され、酸素や栄養素が脳にもたらされます。結果的にそれは情報処理や注意の向け方、集中力や柔軟性、ワーキングメモリーなどの機能を高めていくことになります。
簡単に言うのであれば、勉強ができる子に育てたかったら、小さいうちは勉強をさせるのではなく、身体を使って遊ばせましょう。ということになります。

空間認知は主に二つのフレームワークで出来ています。
エゴセントリックとアロセントリックと呼ばれるものです。
エゴセントリックは自分のいる位置や自分の見方によって変わります。左右、前後、上下などです。
一方、アロセントリックは記憶、思い出すことや環境を認知すること、目印になるものを見て認知できるような位置のことをいいます。東西南北などを認知したり、星を見て自分の位置が分かるような感じです。
これらの空間認知能力は、記憶、認知、理解に深く関係しています。それは日常生活の様々なエリアで常に使っているものなので、空間認知力が高いとストレスレベルが低いということが分かっています。人の心理や行動にも深く関わっています。
動く動物にとって、人間も含め、周りの環境に関する情報を記憶して維持することは生存する上でとても大事です。特に人間によっては、「物質」の位置を認識し、それを自分の環境に置きかえて理解したり、自分のニーズや、気持ちを表現したりすることにも繋がってきます。
さらに身近なことでいえば、私たちは、どうやって物の整理整頓をするのでしょう?靴を履く時に右左をどう理解し、どうボタンをかけ、職場に行ったり、買い物に出かけたりする方向がどう分かるのでしょう?ということも空間認知に関わってきます。
様々なものの形や位置を処理しているから、それが分かるのです。
「数字」と実際にそのものがいくつあるのか、というのはある意味全く別の案件であるにも関わらず、りんごが3つあるのを見て、数字の「3」というシンボルに結びつけ、さらに3+1=4という具合に表し、まるで物体がそこにあるかのように思い描いて理解しているのも、空間認知能力です。

具体的な空間認知の働きとしてみていくと、以下の4つがあります。
内的回転能力
内的回転能力とは、頭の中でイメージを回転してみることを言います。例えば、目を閉じて、牛をイメージしてみてください。牛が逆さまになっているのをイメージすることができますか。また、もし、何かが半分に折れていたり、曲がっていたり、半分に壊れていたりする場合、それをイメージすることができるでしょうか。これが内的回転能力です。
分解能力
分解能力とはひとつの物質を複雑な背景から分離してみる力のことを言います。たくさんある看板の中から自分が今から行こうとしているお店の看板を見つけるなどです。
空間尺度能力
空間尺度能力というのは違う大きさの対象物の間の情報を尺度で認識することです。例えば、図鑑で猫を見て、実際に外に出て猫を見たら猫だと理解できたり、IKEAの家具の組み立て方を絵で理解したりするような感じです。実際の大きさと違っていても、そうだと分かるのはこの空間尺度能力のおかげです。
ナビゲーション能力
ナビゲーション能力は自分の環境の周りで実際に動きまわり、目的地に着くことができるような能力のことを言います。建物のイメージや目印を認知し、似ている建物や違いを理解して、大きさやルートを認知し、頭の中にその周りの環境を思い描くために使っている能力です。

空間認知は、人間の平衡感覚に関わっていますから、三半規管が正常に発達してこその空間認知ということになるわけです。「耳」というのは非常に大事な情報を運んできます。音だけではなく、高さ、深さ、角度なども耳が測っているわけですよね。そして、まだ見ることができない危険や、特定の声を聴き分けたりということもしています。平衡感覚が発達していないと、耳に入ってくる音はとても大きく、危険に聴こえます。もしくは耳障りで不快な音に聴こえます。バックグラウンドにある別の音と分別して大事な情報を得ようとするのは脳と耳の連携ですが、平衡感覚が発達していなければ、聞こえる全ての音が過剰に聞こえ、大事な情報を聞き落とすということもあります。
周りが気になって人の話が理解できていなかったり、うっかり聞き逃しがあったりすることが日常だとすると、それは耳から入ってくる音を上手く処理できていなかったりすることがあります。
過剰な音は怖いものです。感情的にも不安定になります。そして耳から入ってくる音によるストレスは、副腎にも影響し、慢性疲労となっていくこともあります。やる気がない、行動できない、生きているだけで精いっぱいの毎日となってしまうことも珍しくありません。
もし、車酔いしやすかったり、大人になっても地図が読めなかったり、感情的に不安定で怖がりで、人の意見に引っ張られてしまうようなことがあるとするならば、
身体を動かしましょう。認知症は空間認知能力が低下していきます。
周りの環境と関わりながら身体を動かすのが理想的です。例えば森を歩く、山に登る、砂の上を歩くなどです。
平衡感覚は身体を動かさなければ身に付きません。平衡感覚は空間認知に直結しています。それが、心の安定となっていきます。過剰な耳からの情報も平衡感覚を整えていくとことで楽になっていきます。