ワーキングメモリーと生きづらさ

green branches with olives and leaves against sunshine
green petaled flower
Photo by Evie Shaffer

生きづらさについて毎回書いていますが、今回も「こんな可能性もあるよ。」という観方で提案をしてみたいと思います。コンサルテーションでの相談で、よくあるのが、「1対1なら喋れるけど、人が増えると会話に入れない。」というようなもの。会議のようなところで準備ができていないまま発言をしたりするのは、ストレスになることも多いですよね。また、もっとカジュアルな場でも「世間話」というのは意外に疲れるし、大変ですよね。

人との会話。人付き合いそのものが、私はワーキングメモリーに頼っているところがあるのではないかと思うので、ワーキングメモリーのことを書いてみたいと思います。

photo of people doing handshakes
Photo by fauxels

ワーキングメモリーとは、入って来た情報を一旦、頭の中で保持し、どの情報を優先して覚えておけばいいのか、そしてどの情報は削除するのかを整理整頓する働きのことを言います。記憶して、整理して、削除するという活動を瞬時に私たちは日常的に行っています。例えば、簡単な会話でも、相手の話を聞いて、何が覚えておくべき重要な内容なのか判断して記憶し、何が覚えておくに値しないから削除するべきなのかを一瞬にして行います。何かを見たり、聞いたりする時、私たちはそのように適切な判断を繰り返すのです。もちろん、それはワーキングメモリーが上手く働いている時ですね。

逆に、ワーキングメモリーが上手く働いていなければ、何を記憶し、何を削除するべきなのかの判断が上手くできないので、目から入ってくる相手のネクタイの曲がり具合が「優先」的に記憶されてしまったり、耳から入ってくる相手の声のトーンが「優先」されてしまったり、相手が言った「いちご」という単語の抑揚が関西風だ。というような情報が優先となり、会話の内容としては重要ではないのに、削除ができなくなってしまっている状態です。大事な話の内容を記憶していないので、それをどう返せばいいのか分からない。というようなことが起こるので、世間話にもなりません。もしくは、全ては大事な内容という感じで「削除」が出来ていないので、情報量が多すぎて返す言葉もなく、黙り込みます。

このように、ワーキングメモリーというのは、日常生活に深く関わっています。頼まれたことを記憶してそのタスクをこなすとか、マルチタスクで複数のことを同時にこなすことができるのもワーキングメモリーの働きのお陰です。ワーキングメモリーは単に短期的に記憶することだけではなくて、計算などの操作に重要な役割を果たします。なので、学校の勉強や仕事などの能力にも関わってくるのです。例えば、

算数では、問題を読んで記憶し、何を計算すればいいか整理して、答えを出すわけです。

国語では、読んだ内容を記憶して、そこで読んだ内容を文脈として理解し、あまり必要だとは思わない描写などを記憶に残さず忘れることで、答えを出しています。

photo of strawberries in bowl on table
Photo by Jenna Hamra

ワーキングメモリーの働きは基本的にはそのように記憶⇒整理⇒削除ですが、いくつか別の働きをして成り立っているのでそれを説明します。

言語性ワーキングメモリー

視覚性ワーキングメモリー

エピソディックバッファ

中央実行系

です。

多分、今このブログを読んでいる時に、声に出して音読をしている人は殆どいないと思います。文章を読むとき、大抵、黙読をしながら、頭の中で音読をしています。頭の中の音読のことを音韻ループと言います。文章に限らず、    数や単語も、音声で表現できるものを、言語性ワーキングメモリーと言います。音を頭の中で出すことによって構音リハーサルという働きで、記憶が消える前に再生プレーヤーのように繰り返して、短期的に記憶することにも繋がります。

音で表せない絵や映像のようなものは、視覚性ワーキングメモリーの働きを使います。

言語化ができない事柄を視覚イメージとして記憶します。このワーキングメモリーが働いていると、何か絵を見てから、その絵を見なくても、大抵その絵には何が描かれていたか思い出すことができます。様々な絵、イメージや位置情報など、視覚を司る部分の記憶ということになります。

言語性ワーキングメモリーと視覚性ワーキングメモリーを結び付けて、時系列に並べて記憶を形成する働きをエピソディックバッファと呼びます。読んだ本のあらすじや、見た映画のあらすじを時系列の沿って思い出すこともこのエピソディックバッファのお陰で可能になります。またインターネットで読んだ小さな記事を関連づけてひとつの脈として理解できるのもエピソディックバッファのお陰です。

それに加えて、中央実行系というものも働いており、それは注意の焦点を絞ったり、必要なところに注意を分けてはらったり、必要な情報へ注意をスイッチしたりします。そして、言語性ワーキングメモリー、視覚性ワーキングメモリー、エピソディックバッファの指令塔のような役割となり、この3つを見張る役割を持っています。中央実行系そのものには、記憶する力はありません。

先ほど、算数と国語の例で触れたように、ワーキングメモリーは学習障害とも深い関係があります。学習障害は知能の遅れはなくても、聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと、計算すること、推測することなどに困難が生じる状態のことを言います。日本では、特に「話すことが苦手」なのは「人見知り」という性格だと思われがちで、本人もそう思い込んでいることが多いような気がします。そんな私もそうでした。ですが、コミュニケーションが苦手というのは学習障害であることがとても多いのです。欧米では、常に発言が求められるため、学校で静かにしているとアセスメントの対象になることが多く、小さいうちから学習障害のサポートが始まることもよくあるように見受けられます。

学習障害の中でも文字を読むことが難しい場合、ディスレクシアと呼ばれ、書くことが難しい場合、ディスグラフィアと呼ばれます。また算数に関してはディスカリキュアと呼ばれます。

ディスレクシアは言語性ワーキングメモリーの障害があり、ディスカリキュアは視覚性ワーキングメモリーの障害があります。コミュニケーションにおける障害では、どちらもあり得ます。

white ceramic teacup with saucer near two books above gray floral textile
Photo by Thought Catalog

ワーキングメモリーが弱いと学習障害だけではなく、日常的にこんな困難に繋がることがあります。

★会話が苦手:頭に入ってくる情報の整理ができず何に注意すればよいのかが分わからず混乱してしまう。

★忘れ物や、紛失物が多い:必要な情報を頭に保持することができないため。

★途中でやめてしまう:記憶の削除ができないため、「あれも、これも」とどれも中途半端になる。

★目の前の快楽に弱い:中央実行系が上手く働かない (例:貯金ができない。目の前の美味しそうなもの、きれいなものなどに囚われてしまう)

★次の行動への切り替えができない:記憶の削除ができず、新しい情報が入りずらい。

如何でしょう?心当たりがある方もいるのでは???

ワーキングメモリーは育てることが可能です。

まず、子どもだったら、スクリーンの時間を減らすこと。これは賛否両論あるかもしれませんが、特に7歳までは、「真似」をすることがとても大事になります。お母さんがしているように、野菜を切る。お父さんがしているように、お皿を洗う。子どもは観察します。そしてその中で必要な情報を脳に記憶して、優先ではないものは記憶から削除します。さらにそれをアウトプット、「作業」として持ってきます。それがワーキングメモリーの極みです。そして子どもが体を使って真似をすることは、空間認知を育てます。

おすすめのゲームもたくさんあります。

それは・神経衰弱や、

・お使いゲーム(お使いで買わなくちゃいけないものを記憶させ、実際に買ってくる。お使いできない年齢や外国のようにお使いに行けない場合はもちろん、オモチャで!)、

・マジックカップ (クリスタルやビー玉、もしくは音がしないスーパーボールのようなものを3つの伏せたカップのどれかに隠して、テーブルの上で移動させて『どこに入ってるかな?』みたいなゲーム)、

・背中に単語を書く(なんて書いた??と聞く。)

ちょっと大きめの子なら ・数字ゲーム (数字は何でも良いのですが、一桁の数字を最初の子が言います。例えば『3』と言ったとします。次の人は、前の人が言った『3』に自分の選んだ数字を加えます。『3』『1』。さらに次の人は『3』『1』と言ったら自分の選んだ数字を加え『8』など・・ 前の人が言った数字を記憶しつつ自分の数字を加えていくというシンプルなものなので、車の中とかお薦めです。)

他にも色々ありますが、子供向けはこんな感じ。

大人も、知性を使うことと、体を使うことを同時にできるような作業がワーキングメモリーを育てるには有効です。ヨーガはその点、全てをカバーしていますね。基本的に、インプットとアウトプットの積み重ねをすること。何かを学んだら、それを伝えたり教えたりすること。ディクテーションのようなシンプルな練習も良いです。聞いた文章をそのまま記憶して紙に書き出すような作業です。

ワーキングメモリーはただの短期記憶ではなく、「作業する」ところまで持っていく能力のことですからね。

assorted color ceramic tea set
Photo by Lina Kivaka

そして普段からできることとして、食べるものをお薦めします。ワーキングメモリーを高めるには、「ブルーゾーン」の食べ物を真似ることがおすすめとも言われます。日本なら沖縄。そして地中海のギリシャなどが含まれます。良質な油や魚介類やナッツ類は認知能力や記憶力の改善になります。

そしてさらに朗報。チョコレートです! ですが、ここはカカオの成分の高い砂糖控え目なものでお願いします。朝はコーヒーより、ココアです。(って私はココアもコーヒーも朝飲まない人ですけど)

さて、ここまで書きましたが、私はワーキングメモリーの高い「機能的」で「能力」の高い人を育てることを提唱しているわけではありません。人として人生の目的を持つ充実した生き方の提案であり、創造する人生の提案です。そこで最後にホリスティック且つ、スピリチュアルなものの観方を加えさせてもらうと・・・

ワーキングメモリーは「真似」で育つことを書きました。そう。人は面白いことに、自然に真似る生き物です。自分の行動、話し方、態度、全て周りの人に影響します。

ということは、ひとりひとりが真似られても大丈夫な模範されるに等しい自分に育っていかなくちゃいけないということも言えるかもしれません。でも、それは自分が生きづらさを感じている時には、なかなかできることではないでしょうね。日々の暮らしにいっぱい、いっぱいになっているとすると、それはまた、もしかしたら、ワーキングメモリーの低さからくる様々な生きづらさなのかもしれません。

投稿者: mayumicosmiclight

神奈川県生まれ神奈川県育ち。20代でオーストラリアに移住。 感覚処理障害から精神的な不安定さに悩まされて大人になる。 感覚が全て繋がった状態であるシナスタジア(共感覚)を持つ学習障害者。 シドニー大学博士課程前期終了。Art専攻。 シュタイナー教育を学び、シュタイナー学校で手仕事やアートを教える。 自閉症スペクトラムや感覚過敏の子どもたちと関わる中で様々なことを学び実践。 現在はCosmic Light Therapy® Cosmic Light Pty Ltdディレクター。 感覚過敏や学習障害、スペクトラムなどを持つ子どもや大人のCurative Education, エクストラレッスン®、ホリスティックアートセラピー、サウンドセラピー、クリスタルセラピー、身体を使った発達のサポートなどを合わせたホリスティックセラピーを用いて生きづらさや感覚過敏の人たちが、12感覚をバランスよく使い360度の空間を使うことで生きやすさを得るための知識を伝える講座や、身体と感覚、ヴェーディック占星術を合わせて用いた講座などを行っている。地球にも身体にも優しいエシカル商品の販売を日本在住のOfficial Shopオーナーたちと提携してプロデュース。書くことを老後に向けて本業としていくことや、循環のある豊かな地球にしていくための提案をこれからも続けたい。

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