今日ここで書くことは、アントロポゾフィーと現代科学の交差点、そして自らの体験を通して語ることです。医療アドバイスではありませんので、是非、ご自分で調べて考えて、ピンと来ることは実践し、続けてみてからご自分なりの今の「結論」を出してみてください。
そして、とても大事なのは、人の体の構造や働きは基本的に同じブループリントの上につくられた「人間」の原型にあるということと同時に、それぞれの「今現在の体の働き」には様々な環境からの影響を受けて違いがあるということを理解してもらいたいということ。
それは巷でよく言われる「バランスの取れた食生活」とか「人それぞれ違いがあるから」とかそういう曖昧な表現で誤魔化されるべきではなく、「今現在の状態はそれぞれ違う」ということへの理解であり、原型には何ら変わりはないということです。そして「今現在の状態の観察」ができる目を育てていくことの大事さは語っても語り切れません。
今日は、大きな議論にもなりうる「糖質」の取り方について。それもちょっと生きづらい女性のカラダへの影響について書いてみたいと思います。
同じように「糖質」の話題に触れるにしても、どんな特性を持っている人を対象に書いていることを明確にすることは大事だと思うので、万人ではなく、今現在、何だか生きづらいなぁとか、自分の神経質さで色々なやりにくさを感じている人を対象に書いていること、今一度ご理解ください。
神経質で過敏でちょっと生きづらい。自分はHSPなのか、神経発達症があるのか、そこら辺の違いと共通点のような議論は今日は横に置いておくとしても、例えば「不安を感じやすい」「人前で緊張しやすい」「感情的に不安定」のような課題を抱えているとすると、糖質の取り方に気を付けてもらいたいのです。
でも、それはその辺で言われる「糖質制限」の話ではなく、自我と糖質の話です。
まずはそんな人の「血糖値」から、話を始めます。人間の血糖値は太陽の動きとシンクしています。アントロポゾフィーでは、太陽は自我と繋がっていると考え、そして、ルドルフ・シュタイナーは、自我を降ろすには糖が必要である。と様々なレクチャーで言っています。ですが、血糖とは実際に何なのでしょう?
ブドウ糖
血糖は血液中のブドウ糖のことで、細胞が生きていくためのエネルギー源のことです。
ブドウ糖はとても大事なエネルギー源であるとされます。一般的に
・脳や筋肉などのエネルギー源
・集中力や記憶力などの脳の働きの源
・疲労回復の力となる
と言われます。殆どの人が、ブドウ糖をご飯や麺類、パンなど炭水化物から摂っていると思います。
ブドウ糖は体温の源、温かさの源、人間らしさの源であるとも考えられます。
ですが、ここで、もし、不安度が高く、過敏で、思考能力が下がっている人に、「炭水化物からブドウ糖をそれほど摂らないようにしてみてください。」と言ったとしたらどう感じるでしょう?大抵の人は炭水化物を摂らないのはかなり難しく感じるのではないかと思いますし、今、ブドウ糖は大事なエネルギー源であると言ったじゃないかと反論をしたくなる気持ちもわかります。
ですが、ブドウ糖以外にも大事なエネルギー源はあります。それがケトン体です。ケトン体もまた、細胞のエネルギー源になります。ケトン体は、脳細胞にとっては、ブドウ糖よりも効率が良いエネルギー源です。血糖値が下がった時にはケトン体がないと神経細胞の活動が低下して、酷い低血糖症状を起こし、昏睡状態になる事もあります。ですが、ケトン体が十分にあると低血糖になっても、低血糖の症状は出ないのです。人間の身体は非常に賢く、脳のエネルギー源は血液中のケトン体の濃度に合わせて変化することができます。ケトン体を上手く使うには、上質の脂質とたんぱく質が十分に必要で、ただ糖質制限をすればいいというわけではありません。また、インスリンの基礎分泌ができるようになれば、糖質を制限してもインスリン分泌不足時の「ケトアシドーシス」にはならないのです。逆に糖質を過剰に摂取している時にはインスリンの分泌スパイクによってケトン体をつくるのに必要な酵素が抑制されてケトン体が出ません。
そんなケトン体は肝臓で生み出され、その後、筋肉内でエネルギーに生まれ変わります。肝臓と筋肉はお互いに連携して働いています。ここに、神経発達症を持つ人たちの可能性が隠されているのです。どういう可能性か、ということは後で説明していきますね。ただ、神経発達症とは代謝と体の動きの問題であるといことだけは今書いておきます。
ケトン体とミトコンドリアの関係性
ケトン体はミトコンドリアを活性させる働きがあります。ミトコンドリアは、脳の神経細胞の活動に非常に重要な役割を果たしており、ミトコンドリアの活動が低下すると脳の認知機能が下がります。そして、過剰なブドウ糖の摂取は、ミトコンドリアの活動を著しく低下させることが分かっています。ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギー不足によってさまざまな症状が現れますが、その中でも精神症状、発達の遅れなどが指摘されます。また、感覚処理障害のような症状や、発達性運動障害のような症状も指摘されています。ミトコンドリアの最も重要な仕事は、私達が食べたものからエネルギーを引き出して、酸素と組み合わせて、ATPを生成することです。ATPに蓄えられたエネルギーは、ATPが体に燃料として使われたときに初めて放出され、体がATPを燃料として使うとき、分解され、アデノシン二リン酸(ADP)とリン酸(P)という副産物ができあがります。それが私たちが活動するためのエネルギーのカラクリです。ミトコンドリアによってつくられるエネルギーはそれぞれの臓器で違う働きをします。肝臓のミトコンドリアは肝臓がタンパク質を分解したときに出る廃棄物を解毒する酵素をもっています。そして先ほども書いたように、脳は、ミトコンドリアの作ったエネルギーを使って学習したり、記憶の整理整頓をしたりします。そのミトコンドリアを私たちは親からもらっています。ですが、私達に与えられた自由意志とは、そのミトコンドリアを自分の生きる目的に使っていくことであり、親と同じことを繰り返すためにこのエネルギーを使うわけではない。ということを度々自分たちにリマインドしたいものです。
コルチゾールと糖質の関係
コルチゾールと言えば、ストレスホルモンとして知られています。悪者のように聞こえますが、コルチゾールは非常に重要な役割を果たしています。
コルチゾールが悪役扱いされてしまうのは、コルチゾールの値が長期間、高いままである時。
コルチゾールの働きをまとめると
- 代謝を正常化
- 血圧のコントロール
- 抗炎症効果
- 血糖のコントロール
- 睡眠と覚醒のサイクルのコントロール
などを司っています。本来は決してわるものではありません。コルチゾールは副腎でつくられ、朝の起床時に高くなります。何と起床時には60-150%も血中でコルチゾールが高くなるのです。そして、起床後、30-40分にピークを迎えます。ただ、過剰にコルチゾールが分泌され、値が落ちてこない時、朝、学校に行きたくない、というような感覚になる可能性もあります。もちろん、全てがコルチゾールのせいではないですけどね。
ここでまた、糖質の話が出てきます。私たちが炭水化物、砂糖、ハチミツ、果物など何かしらの糖質を取り入れる時、そのタイミングと取り方に気を付ける必要があります。ハチミツは体にいい。果物は体にいい。という話ではありません。ここでは、「不安度の高い人」「過敏な人」の話をしています。もし、朝起きて、いきなり甘い物で血糖値を上げてしまうとすると、それがコルチゾール分泌をさらに促す可能性があります。先ほど、コルチゾールは副腎で分泌されると書きましたが、副腎の大事な仕事の中に「逃げるか闘うか」の反応があります。ただ、ストレス下にあるから、というだけではなく、そもそもコルチゾールの過剰な働きが「危険である」と感じさせてしまうということにもなり得ます。
ストレスを感じると、脳はもっと効果的な方法でエネルギーを求めます。ストレス下にある時、決断力が鈍り、集中力が鈍り、記憶力も鈍ります。効果的な方法での脳へのエネルギーの供給は、ブドウ糖。それが、私達がストレスを感じると甘い物がほしくなるという理由のひとつです。
また、どんな糖質でも、ドーパミン、セロトニン、エンドルフィンなどの神経伝達物質をリリースします。甘いものを食べると気分がよくなるのはそういうわけです。一時的な快楽を与えてくれるのです。ただし、急激に上がった血糖値は、そのあと急激に落ちるものなのです。(ハチミツは砂糖に比べれば緩やかではあります。)その血糖値の急下降もまた、気分の上がり下がりと直結しています。コルチゾールの分泌がコントロールできるようにならない限り、甘い物を欲する気持ちもおさまらないし、感情のアップダウンもコントロールできるようにはなりません。
また、特に砂糖の話ですが、砂糖を摂取しすぎると、ビタミン類はじめ、多くの栄養素が吸収しにくくなりさらなる悪循環が続きます。例えば
・マグネシウム (ストレス反応を抑えてくれます。)
・ビタミンB群 (神経伝達物質の生成を助け気分を安定させます。)
・ビタミンD (不安、うつ状態などから守り、脳の炎症反応から守ります。)
・オメガ3脂肪酸 (脳組織全体に働きかけ、抗炎症の機能を持ちます。)
・亜鉛 (脳内の化学反応、決断能力、言語能力に働きかけます。)
朝ご飯に、食パンや白いご飯、グラノーラやシリアル、オートミール、砂糖たっぷりのヨーグルトなどは生きづらい人たち、感覚的に過敏だったり、不安が強い人たちには何一つよい影響がないことは分かりますよね。
では、どのように朝のコルチゾールの上昇を上手く使ったらいいのでしょう?答えはとてもシンプルです。
・朝起きたら水を飲み、体を動かす。
・前日の夜に興奮させない。(子どもにテレビやゲームをさせない。大人が遊ばせすぎない等)
・前日の夜に緑茶やウーロン茶、コーヒーなどカフェインが入っているものを飲まない。
・朝の太陽の光を浴びる。
・普段から魚、肉(ホルモンを使っていないもの)を食べるように心がける。
・糖質がどうしても必要なら太陽が出ている時だけ。(ハチミツは場合によっては夜もあり。)
さらに加えれば、過剰な糖質摂取により、インシュリン抵抗性が出ている場合は慢性的にコルチゾールの値が高くなってしまいます。常に不安がつきまとったり、疲れやすかったり、免疫力が下がったり。。。と様々な生きづらさを持つことになります。
コルチゾールとエストロゲンの関係
このコルチゾールですが、女性の生殖機能に関わるエストロゲンとも密接な関係があります。ストレス度が上がると、生理のサイクルや、生理の状態が変わるというのは分かりますよね。しかも、女性の感情の不安定さ、体調の悪さ、太りやすさなど全般、エストロゲンに振り回されている可能性もあり得ます。
コルチゾールとエストロゲンにはこんな関係があります。
・コルチゾールはエストロゲンを下げる。
・エストロゲンはコルチゾールを下げる。
・エストロゲンがコルチゾールの働きを活性化する。
もう、何のこっちゃ?という感じになってきてしまいますが、ここで、一旦、エストロゲンの働きについて簡単に説明しておかなくてはなりませんね。
エストロゲンには炎症を促す働きと炎症を抑える働きのふたつがあります。
実はこれが月経に重要な役割を果たしているのです。
エストロゲンは、炎症を抑える働きと炎症を促す働きの両方があります。女性の月経サイクルはこのエストロゲンの炎症を抑え促す働きによって起こります。また、エストロゲンは生殖だけではなく、循環器や骨にもなくてはならないものなのです。エストロゲンが過剰すぎると、月経周期が乱れたり、生殖機能そのものにも影響したりします。では、何がエストロゲンの値を高くし過ぎてしまうのでしょうか。
・脂肪組織がエストロゲンを作ります。体に脂肪が多すぎるとエストロゲンの値が高くなります。
・コルチゾールの値が高すぎると、プロゲステロンをつくる能力が下がり、エストロゲンが過剰になります。
・お酒を飲み過ぎると、エストロゲンを分解する能力が減ります。
・マグネシウム不足
・マイクロプラスチックはじめ環境汚染 (洗剤、シャンプー、テフロン、プラスチック製品、フリースなど)
また、ここで思い出してみましょう。エストロゲンが高い状態が続いてしまうということは、コルチゾールの値を上げることにもなるし、逆にエストロゲンが低ければ、コルチゾールも下がる。またその逆もあるのです。
エストロゲンの「炎症機能」と糖質の関係
そこで、また糖質の話をしなければなりません。過敏さや不安がある時、何となく糖質は避けた方がいいんだろうなぁということはケトン体の話からも分かったと思います。ただ厄介なのは、エストロゲンが「炎症」を起こすのに、糖質を必要とする。という点なのです。
そこが女性の体と男性の体の絶対的な違いです。同じようなケトジェニックダイエットのようなものができない理由です。
血糖値は生理サイクル内で一定の変化を見せているので、それに合わせて糖質の取り方を変えていくのが賢いのでは?と思います。
・生理前は血糖値が高い。これはプロゲステロンがインシュリン抵抗を起こして炎症を促し子宮内膜を剥がすためです。
・生理中は血糖値が低い。エストロゲンの値が上がって、血糖値は下がります。
・卵胞期は血糖値は低く、インシュリン感受性が高まります。
・排卵期から黄体期は血糖値がピークになります。(特に生理一日前がピーク)
シュタイナー医療の世界では、子宮内膜を剥がす炎症のことを自我の力が働いていると言います。血糖値を上げて自我を降ろす必要があるのは、生理前。体が自然にしていることです。血糖値が上がっている時、ストレスホルモンの働きかけも強いので、敢えてそこで糖分を取る必要はないのかもしれませんが、一時的に炭水化物に制限をかけずに食べ、程よくドーパミンとセロトニンを上げるのは感情対策としてありだと思います。
生理中は糖質は最低限にしてみるとよく、
排卵期にかけては、程よい炎症を必要とするので、炭水化物、果物などを積極的に摂るといいでしょうね。
排卵後、黄体期は苛立ちがあるのだとすると、砂糖は出来る限り辞めないと、必要なミネラルが体外に流れ出て、余計に感情的な苛立ちが出ます。甘いものがほしいなら、カボチャ、さつまいも、ハチミツなどで補うといいと思います。太陽の色「ゴールド」のものがヒントです。
女性の体は月のサイクルとシンクしています。排卵のリズムは月が刻み、生理の出血は太陽の自我と結びついています。排卵期は水と関係する「米」を一時的に摂る。「米」という漢字は「氣」と同じでエーテル的(月)の性質と水の性質を強く持ちます。生理前は積極的に太陽の光でビタミンDの補給と肉、魚、良質の脂を摂りましょう。女性の体は月と太陽のダンスによって営まれています。
私たちが糖分を必要とする理由は何でしょう?
ここまで書いてきたように、糖分はブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、でんぷんなどの多糖類など色々あります。どれがどんな風に必要なのか。というのはその人のその時の状態によって変わって来るでしょう。人それぞれなのではなく、状態それぞれなのでね。
控え目にいって、糖分は基本的に無理して摂らなくても、現代人は常に「炎症を起こしている」状態でもあるし、神経伝達の状態が悪くなる要素がたくさんあるのです。それが多くの人が抱えている不安や焦燥感の正体の一部であることは間違いないでしょう。
食事制限をするのがストレスだから、食べたいものを好きなだけ食べるという意見の人もいると思います。
でも、考えてもらいたいのです。
エネルギー源である「糖」は、手っ取り早くエネルギー源になります。活動量によって、アストリートのような人たちは糖や電解質などが必要であるとは思います。ですが、現代人の生活でそれだけの「糖」を無駄にせず使う活動量がある人はよっぽど肉体労働でない限り、ないでしょう。
糖は自我を降ろす。それに間違いはありません。エネルギーがあるところに、温かさがあるところに自我は降りてきます。
けれども、そのエネルギーと温度を私たちは意図的に目的をもって使うだけの準備ができているのか?というところでしょう。
もし、ストレス状態を乗り越えるためだけに過剰に糖を取り入れ、それを上手く使えていないのだとすると、それが様々な生活習慣病などに繋がっていると考えることができます。
先ほど、代謝と運動の問題に少し触れました。神経発達症がある子どもも大人も代謝と、殆どの場合、運動の課題を持っています。それはただ運動神経が良いとか悪いとかではなく、体を意図的に使えているかどうか。ということ。
代謝は食べ物で取り入れたエネルギーを上手く熱に変えていくということ。
「熱を使って動く。」それが本当の人間らしさです。その熱とは、目的であり、意図であり、動くとは、その目的や意図に向かっていくこと。
代謝と運動を高めていくことで、神経発達症の表現は消えていきます。少なくとも、柔らかくなっていきます。
その不安。もし知性ばかりが優位で体が思い通りにいかないことから来ていたら?
過去の怒りや悲しみ。もし代謝が上手くいかず感情を燃やせないということから来ていたら?
代謝と運動。
「自我を降ろす」という言葉にはそんな断片も含まれていると私は思うのです。
References:
Hormone health network (2021) – “What is cortisol”
Healthline (2020) – ‘11 Natural Ways to Lower Your Cortisol Levels’ –https://www.healthline.com/nutrition/ways-to-lower-cortisol
Alfred J Plechner (2003) –”Cortisol abnormality as a cause of elevated estrogen and immune destabilization: insights for human medicine from a veterinary perspective”
Frontiers (2020) – Higher Circulating Cortisol in the Follicular vs. Luteal Phase of the Menstrual Cycle: A Meta-Analysis
Science direct (2016) – Stress-induced increases in progesterone and cortisol in naturally cycling women
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2744625
https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(23)00286-3/abstract
Rudolf Steiner, Fundamentals of Anthroposophical Medicine GA 314、28 October 1922 p.m., Stuttgar
Rudolf Steiner, Course for Young Doctors Easter Course GA 316、Dornach, 21st April, 1924
https://www.psychiatry.org/news-room/apa-blogs/the-menstrual-cycle-and-mental-health-concerns
Depression and the menstrual cycle from Section 2 – Medical management
Published online by Cambridge University Press: 05 May 2013
By Benicio N. Frey ,Luciano Minuzzi ,Roberto Sassi and Meir Steiner
Edited by J. John Mann, Edited in association with Patrick J. McGrath and Steven P. Roose
